『奇妙なアメリカー神と正義のミュージアム』をよんで。
ミュージアムで何がどう展示されているか?から、そのミュージアムの主張が見える。
先日広島の平和記念資料館の被爆再現人形が撤去されたとき、
その意図は何だろうか、アメリカへの配慮か?アメリカ人はどんな気持ちで展示を見ているのだろうか?と考えていた。
そういえば、アメリカには核を称賛するミュージアムがあると聞いたことがある。
どのような施設なのだろうか、気になった。
すぐに直接訪れることはできないが、1冊の本に出会った。
『奇妙なアメリカー神と正義のミュージアム』・・矢口祐人
という本だ。
もしかしたら今のアメリカの心の一部が見えてくるかもしれない。
そんな思いで読み進めた。
核のミュージアムだけでなく、進化論を否定するミュージアム、罪と罰のミュージアムなどアメリカの個性的なミュージアムが続々と登場する。
ただおもしろおかしく書き連ねているのではない。
どんなモノがどう展示されているかや訪問者の様子を冷静に観察し、
様々な視点に立ってどんな主張があるのかや訪問者に与える影響などを考察しているのがおもしろい。
核のミュージアムには「核のボタンを押してみよう」という体験装置もあるそうだ。
日本人の心理からすると信じがたい体験だ。ここは北朝鮮ではなくアメリカなんだけれど、なんだかノリが同じではないか?やはりアメリカも北朝鮮も核を称賛している点では変わらないのではと感じた。
私が意外と感じたのは、核のミュージアムや日本のパールハーバー攻撃のミュージアムについいて、プロパガンダ的にアメリカが断然正しい!アメリカファースト!のような主張だけが全面に押し出されているのかと思っていたが、そうではないようだということ。もちろんそのような主張はあるものの、他の立場に配慮したり、冷静な視点で展示されていた。パールハーバーの施設では同盟国である日本の立場も十分に展示されていると。
ただ、隠したい真実は巧妙に隠されている。ハワイ先住民の立場の展示はほぼない。
”ハワイの先住民は「無実のアメリカが突然卑劣な的に攻撃された」とは考えない。アメリカは背後からきた暴漢に襲われたかもしれないが、そのアメリカ自身も(ハワイの先住民からハワイ王国を奪った)実は盗人なのである。”()内は私が追加。
アメリカのミュージアム同様、日本のミュージアムについてもどんな主張がしたいのか?という視点で見るとさらにおもしろいかもしれない。